トヨタ・AE86、時代の流れに逆らいFR方式を踏襲したスポーツクーペ！

　AE86とは、1983年にトヨタ自動車が発売したカローラとスプリンターのスポーツモデル（スポーツクーペ）である4代目カローラレビン／スプリンタートレノの共通車両型式番号です。

　1983年5月に、カローラと兄弟車のスプリンターはビッグなモデルチェンジを断行します。ファミリー系の4ドアセダンと、リフトバックの後継として開発された5ドアのハッチバックは、慣れ親しんだ後輪駆動のFR方式と決別し、広いキャビンスペースを得られるFF方式へと転換を図ったのです。ドアミラーが解禁になったのも、このモデルからです。

　一方、スポーツ系のレビン／トレノは、痛快な走りを満喫できるFR方式を踏襲しました。ボディタイプは2ドアのノッチバッククーペとハッチゲートを備えた3ドアクーペの2種類で、エンジンは「AE85」が1.5リットルの3A-U型と「AE86」が新開発の4A-GEU型DOHC16バルブの2タイプです。GT系のトランスミッションは5速MTでスタートしましたが、'85年5月に電子制御4速ATのECT-Sを追加しました。サスペンションはストラットに4リンク＋ラテラルロッドを組み合わせています。

　オート店で販売されているカローラの兄弟車がスプリンターです。スプリンターはカローラより上級ムードを演出しています。FR方式を受け継いだトレノは、レビンとの違いを明確に打ち出すため、リトラクタブル・ヘッドライトを装備しました。

　グレードは以下の通りである。

　1.6リッターモデルの最上級グレードで、リアワイパーやパワーステアリング、デジタルメーターが標準装備され、2ドア3ドアのレビン・トレノに存在します。また前期型では2トーンカラーはこのモデルのみです。

　1.6リッターモデルの競技ベース車両で、パワーステアリングとリアワイパーは非装備、メーターもアナログとなっています。ステアリングギアのロックトゥロックが3.0回転となっていて、ノンアシストであることも含め、他のグレードに比してダイレクトでクイックな操舵が可能です。3ドアのレビン・トレノに存在します。

　1.6リッターの競技ベースモデルでGT-Vよりさらに装備が簡略化され、リアブレーキが自己サーボ機能で拘束力に優れるドラムとなり、ステアリングホイールがカローラ / スプリンターのラグジュアリー系グレードと同等のものとなります。2ドアレビン・トレノに存在します。

　「GT-APEX」をベースに装備をより豪華にした「黒の限定車」で、オプション品のパワーウインドウに専用ロゴ入りシート、サイドドアポケット、ゴールドアナログメーター、前後ボディエンブレムのゴールド化、ボディサイドにブラックリミテッドステッカーが装着され、後期型トレノにのみ存在し、生産台数は限定400台です。

　トヨタ・AE86が発売された当時は、ターボチャージャーや前輪駆動などの新メカニズムの取り入れが主流であった。従来のレビン・トレノと同じ自然吸気（NA）の1.6Lエンジンと後輪駆動の組み合わせ、そして先代の「TE71型」から流用した旧態的なフロントストラット、リヤラテラルロッド付きの5リンクリジッドアクスルサスペンションは、当時のレベルからしても単純な構造であり、数多あった国産スポーツカーと比較して見劣りがしました。

　しかし、基本的なサスペンション仕様が先代「TE71型」と同様だったため、サスペンションの改造が容易であったこと、そして当時新規開発された4A-GEU型エンジンを搭載されたことが、チューニング志向の強い層の支持を受けました。

【エンジン諸元】
エンジン型式：4A-GEU
エンジン種類：ガソリン　４サイクル
シリンダー内径×行程（mm）：81.0×77.0
総排気量（cc）：1,587
最大出力（PS/rpm）：130／6600
最大トルク ((kgf・m)/rpm)：15.2／5200
燃料供給装置：電子制御燃料噴射

　1987年5月、レビン・トレノが「AE92型」へとモデルチェンジし、駆動方式がFFに変更されたことで、希少となった軽量FR車としての存在が再認識され、新車による販売当時以上にモータースポーツ関係者の間で注目されるようになりました。

　トヨタ・AE86について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

　最後まで読んでいただき、ありがとうございました。