エルヴィス・プレスリーが愛用した幻のオープンスポーツカー、BMW507

　BMW507は、BMWが戦後初の新型車である501/502をベースに作った、2シーターのオープンスポーツカーです。1955年のフランクフルトショーで発表され、翌年に販売開始されました。

　BMW507のデビューは 1956 年。まだドイツが敗戦のダメージから脱しきれていない時代に生まれました。多くの国民が買えてもせいぜい大衆車どまりだった混乱の時代に、BMW は小型車ではなく、戦前のような高級車路線へと舵を切ったのです。

　どのベクトルに向かってクルマを作っていいかを決めかねている状態のなか、BMWは時代に逆行し、大型モデルの 501 と 502 を急ピッチで開発。その結果、販売成績はまったくパッとせず、BMW は財政難に陥ってしまったのです。

　そんな危機的状況にもかかわらず、贅沢なロードスターたる 507 をデビューさせた裏には、メルセデス・ベンツの存在がありました。とりわけ 300SL のセンセーショナルなデビューは BMW を大いに焦らせ、大型クーペやロードスターの開発に踏み切らせるきっかけともなったのです。しかし、501／502 をベースに作られた 507（クーペは 503 ）は、300SL を意識し過ぎたあまり準備不足と生産の遅れが響き、価格は当初の倍にもなってしまいました。世界中で素晴らしい評価を得たにもかかわらず、507 の販売台数は伸び悩み、BMW はまたしても深刻な経営不振を招いてしまったのです。そのために、優雅で美しい姿とは裏腹にわずか 252 台で生産は打ち切られました。

　エンジンは502に搭載されたV8エンジンをベースにチューニングを施したもので、150馬力を発揮。このエンジンに4速ミッションを組み合わせて、最高速度は時速200キロと発表されました。

　エンジンルームにあるシルバーの箱（写真右下）は備えつけの工具箱です。まさに、BMW の伝統ここにあり。排気量はクーペの 503 と同じながらゼニス製のキャブレターを 2 基にしたり圧縮比を上げるなどして 150hp を発生する。

　トランスミッションは 4速 、サスペンションは、 前：ダブルウィッシュボーン+トーションバー　後：リジッド+トーションバー、ブレーキは、前後ともディスクブレーキ。

　300SLから遅れること、1955年にアメリカの輸入代理店の要望によって開発されたスペシャルティーカーで、BMWにとっては”328”以来のスポーツモデルということで、相当の意気込みで生み出されたモデルです。
　アルブレヒト・フォン・ゲルツ氏がデザインした優雅なデザインは、当時世界中で絶賛されました。

　BMW507は、当時のアメリカのディーラーでは、10,000ドル、現在の貨幣価値換算で80,640ドル（約820万円）で販売されていたとのことです。

　300SLよりも安価なスポーツカーを目指して開発されましたが、開発費がかさんだ結果300SLと同等の価格となってしまい、ほとんど売れませんでした。結局、1959年に生産打ち切りとなってしまい、販売台数はわずか252台。
　現在ではこの優雅なデザインと生産台数の少なさから「幻のオープンスポーツカー」と呼ばれています。

　BMW507について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。BMW507は、現在日本で2台しか残っていないそうです。

　最後まで読んでいただき、ありがとうございました。