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知ってましたか?溝が減ったタイヤは法律違反!タイヤの溝の謎に迫る

タイヤにとって大切なこと、溝と寿命。タイヤにはスリップサインという寿命を知らせる印があります。タイヤの溝は毎日徐々に減ってゆくため、運転手はクルマの運動性能の変化に気づかない場合があります。今回はタイヤの溝についてまとめてみました。

タイヤの溝

 もしもこの世に「雨」が存在しなかったら、タイヤには溝がなかったでしょう。わかりやすいのがレーシングカーのタイヤ。路面がドライのときは、溝がまったくないつるつるのスリックタイヤを履いていますよね。

レーシングカーのスリックタイヤ

 溝がないため濡れた路面ではハイドロプレーニング現象が発生しやすく、雨天での使用は非常に危険である。

 タイヤの溝は路面の水対策なのです。タイヤのウェット性能はタイヤに刻まれている溝がカギを握っています。さらに、タイヤの溝はウェット性能のみならず、乗り心地や経済性、グリップ力、ノイズなどさまざまな目的に応じて綿密に設計されています。

タイヤの溝は排水路?

 タイヤが路面と接する部分を「トレッド」といい、そこに刻まれた模様は「トレッドパターン」と呼ばれます。

様々なトレッドパターン

 回転方向の太めの縦溝と斜め横に刻まれた溝は、ぬれた路面の水の排水路となります。雨の日などにタイヤと路面の間に水が入り、車が浮いて滑ってしまうハイドロプレーニング現象(※)を抑える機能を持ちます。

※あとで説明します。

 斜め横の溝は、排水に加え、タイヤから発生する騒音も抑えます。縦溝と斜め横の溝で仕切られるゴムのブロック一つひとつが小さいほど、騒音は小さくなる傾向があります。

タイヤの溝(トレッドパターン)

 髪の毛ほどの細い溝はサイプです。路面の水膜を切るほか、タイヤが路面をつかむ力を調節して走行バランスをとったり、摩耗を防ぐ役目があります。

 これらの溝の効果は、ゴム質や、タイヤ全体の形状、構造などにも左右されます。タイヤメーカーは、それぞれ独自の構想や技術を駆使し、総合的にトレッドパターンを決めています。

トレッドパターン

 基本的なトレッドパターンと特徴は次の4種類です。

リブ:周方向に連続した模様(タテ溝)

操縦安定性が良い
低騒音である
横滑りが少ない

ラグ:横方向に連続した模様(ヨコ溝)

駆動力、制動力に優れる
牽引力が強い
耐カット性に優れる

リブラグ:リブ型とラグ型を合わせた模様

リブで操縦安定性、横滑りを防止
ラグで駆動力、制動力を発揮させる

ブロック:独立したブロックを配列した模様

駆動力、制動力に優れる
雪路、ぬかるみの操縦性、安定性が良い

タイヤの溝がすり減ったら

 タイヤのウェット性能のポイントは、タイヤと路面の間に水の膜ができないようにすることです。少々の水なら溝がなくても、車の重さだけで水を押しのけることができます。ところが水が多くなると、タイヤの圧力だけでは水を取り除けず、タイヤと路面の間に水の膜ができてしまい、タイヤがしっかりと路面をとらえることができなくなってしまいます。

 そこで、タイヤに溝をつくるわけです。タイヤは、回転しながら溝に水を抱え込んで、そして遠心力で後ろへ水を排出します。こうして、タイヤが路面に密着するようにしています。

 しかし、タイヤが擦りへって溝が浅くなっていたり、路面の水深が深くなって、溝による排水が追いつかなくなると大変です。高速道路を走っている時は特に危険。スピードが出ていると、最悪の場合は「ハイドロプレーニング現象」が起き、ブレーキやハンドル操作が一切効かなくなります。

ハイドロプレーニング現象

 ハイドロプレーニング現象に遭遇してしまった場合は、慌ててブレーキを踏むのではなく、アクセルから足を離さずに、ハンドルもそのままで、シフトダウンなども行うことなく徐々に減速しながら、タイヤのグリップが回復するのを待つことが重要です。

(写真はタイヤを路面側から見たものです。)

スリップサイン

 タイヤには溝の深さが残り1.6mmになると表れるスリップサインが付いています。このスリップサインが出たタイヤを装着しつづけると道路交通法の違反にあたります。また、溝の減ったタイヤは、大変危険です。特に雨の日は、路面とタイヤの間に水が入り込み、タイヤが道路から浮き上がるハイドロプレーニング現象が起き、スリップしやすくなります。

自動車タイヤの摩擦限度

乗用車用タイヤ    1.6mm(高速道路) 1.6mm(一般路)
小型トラック用タイヤ 2.4mm(高速道路) 1.6mm(一般路)
トラック・バス用タイヤ 3.2mm(高速道路) 1.6mm(一般路)

スリップサインの見方

タイヤのスリップサイン

 タイヤの横には△のマークがついています。このマーク付近の接地面の溝底には1.6mmの高さでゴムの盛り上がっている部分があります。タイヤの溝が減ると、この部分が表面に現れてきます。この部分をスリップサインといい、タイヤの周囲に1ヵ所でも現れている場合、すぐにタイヤを交換する必要があります。

タイヤのスリップサイン

ウェット性能とノイズは二律背反

 溝を増やせば、ウェット性能がもっと向上するんでは? と思われるでしょうが、実は溝をつくるとタイヤからノイズが発生します。溝をいっぱいつくってウェット性能を高めれば、静かさが犠牲になってしまう。そこでなんとかこの2つを両立させようと、いろいろな溝の切り方・・・つまりトレッドパターン・デザインに知恵を絞っているのです。
 タイヤの溝はノイズの他にも運動性などにも影響があり、有効接地面積(要するに溝以外の部分)と溝の部分の比率でタイヤの特徴が決まります。ミニバン専用タイヤでは7:3くらいになっています。

まとめ

 タイヤを作る際になぜこんなにも溝にこだわるのか、どうしてウェット性能を高めようとするのか、それは雨の日の事故が晴れの日よりも多いからです。
 時速40kmで走行している場合、雨の日の制動距離は4割伸びるとされています。皆さん気をつけてくださいね。

 雨の怖さに気付いたら、まずウェット性能に優れたタイヤを選び、愛車の安全性能を高めるようにしたいものです。またいくらウェット性能に優れていても、摩耗して溝がすり減ったタイヤでは効果がなくなってしまいます。タイヤの溝の深さが3mmがタイヤ交換の目安と言われています(新品タイヤの溝の深さは約8mm)。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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